英会話スクールに自費で行く前に — 会社の費用で通ってわかった、投資の順番

英語の会議で黙っている状態が続くと、どこかの時点でスクールを調べ始めます。検索すればランキング記事がいくらでも出てきて、月10万円前後の料金を見て手が止まる。

私は Berlitz に通ったことがあり、教材の質、全体的な講師の質などが高く実感できる効果もあり、大変有意義なサービスだと思います。ただし私の場合、費用は会社が全額負担でした。自費だったら、金額面も考慮して、おそらく選択していません。

これは「効果がなかった」という意味ではなく、費用対効果の問題でもありません。効果はありました。優先順位とコストの話です。

スクールで実際に得られたもの

通ってみて価値を感じたのは、次の3つでした。

知識としては知っている区別を、口に出した瞬間に直される。

たとえば時制です。現在完了と過去形の区別を知らない、という人はまずいないと思います。それでも、話している最中には過去形が出てしまう。知識の問題ではなく、自分の表現の癖の問題です。

スクールで得られたのは、それをその場で止められる経験でした。言った直後に指摘されて、言い直す。これを繰り返していると、話しながら自分で気づけるようになります。知っていることと、口が勝手にやってしまうことのあいだを埋める作業は、一人ではできません。

単語の選択を、その場で確認できる。

日頃から疑問に思っていた使い分けについて、複数の人の意見を聞けたのは大きかったです。

実際の困りごとではないですが、イメージしやすい例で言えば、problem issue matter のような組み合わせです。日本語にすると全部「問題」になってしまうので、日本語の側では入れ替えても文が成立します。 しかし英語では別物です。problem は解決すべき不具合や困りごと、issue は議論の対象になる論点や懸案、matter は取り扱うべき事柄そのもの。

会議で There is a problem with your proposal. と言えば、相手の案に不具合があると指摘した形になります。There is an issue we should discuss. なら、共有すべき論点を出しただけです。取り違えると、意図より強く伝わります。

Longman あたりを引けば、違いも文例も書いてあります。ただ、読んで分かることと、話しながら正しいほうを選べることは別です。 自分が実際に使った文に対して「そこは issue」と言われる経験のほうが、定義を10回読むより早い。

自分の思考の順序に合う組み立て方が見つけやすい。

日本語は説明を先に置いて最後に結論が来る、英語はまず結論から——というのはよく言われます。そのとおりなのですが、日本語の頭で説明を組み立てたとき、重要な補足情報をどこに置くのか、という問題が残ります。話しながら何かを言い忘れてしまうこと、そしてそれに気づくことは、少なからずあると思います。

ここで関係代名詞や関係副詞が使えると指導を受けてから、リカバーがずいぶん楽になりました。中高の英語学習では嫌われがちな項目ですが、日本語話者にとっては、日本語と順序を大きく組み替えずに表現でき、後から付け足しをする際にも使えます。

自分に合う組み立て方は人によって違いますが、一人では見つけにくい。講師からのアドバイスは、私にとっては目から鱗でした。


この3つは、性質がそれぞれ違います。単語の使い分けや、自然さ・不自然さへの気づき。知識はあるが間違えがちなことの認知。活用できていない便利さへの気づき。

共通しているのは、どれも一人では埋めにくいということです。ここにコストをかける意義はあると思います。

ただしそれは、最後に残る2割

問題は、会議で黙っている状態の原因の大半が、そこではないことです。

口が回らない。単語だけを投げてしまって文にならない。発言の順番が取れない。数字で詰まる。これらはどれも、自分で観測できて、独学で潰せる部類です。

高い買い物の価値は、安い手段で潰せない部分がどれだけ残っているかで決まります。8割が独学で潰せる状態のままスクールに行くと、月10万円の時間の8割を、月数千円で片づいたことに使うことになる。

私の場合は会社の費用だったので、この計算をしませんでした。自費なら、まず8割のほうを潰します。

投資の順番は3段階

順番を整理すると、こうなります。

第1段階:口が回る状態を作る

音読とシャドーイング。目的は、知っている表現を「考えずに出る」状態にすることです。読んで分かる英語と、口から出る英語は別物で、後者は反復でしか作れません。

月あたりのコストは、無料から数千円。ここを飛ばす理由はありません。

第2段階:出す機会を増やす

オンライン英会話など、実際に人に向かって話す場です。第1段階で口が回るようになっていれば、ここでの時間がそのまま発話量になります。

月あたり数千円。

第3段階:自分では気づけない部分を矯正する

コーチングやスクール。冒頭に書いた「時制」「単語の使い分け」のような、自分では観測できない領域を扱います。

月あたり数万円から。

なぜこの順番なのか

第1段階を飛ばして第2段階に行くと、沈黙している時間を買うことになります。

レッスンが25分あっても、口が回らなければ実際に話せるのは数分です。残りは考えている時間になる。同じ料金で発話量が数分の一になるので、実質の単価が跳ね上がります。「オンライン英会話を続けたけど話せるようにならなかった」の多くは、この状態だと思います。

第2段階を飛ばして第3段階に行くと、矯正する材料がありません。

自分では気づけない癖を直してもらうには、まず癖が出るだけの発話量が必要です。話す量が少なければ、講師も直しようがない。私が Berlitz で時制を指摘されたのは、間違えるだけの量を話していたからです。

第3段階が効くのは、第1・第2で出した発話に、自分では見えない誤りが残っているときです。逆に言えば、そこまで来ていれば効きます。

各段階の選び方

サービス名を並べるより、判断基準を持っておくほうが役に立つと思います。

第1段階で見るのは、教材と1回の長さです。

素材が実務の英語かどうか。日常会話よりも、会議や電話会議を想定した音声と内容が入っているか。そして1項目につき15〜30分程度で完結するか。この段階は続けることが最重要なので、1回が重い設計だと止まりやすくなります。

もう一つ、反復が前提の練習であることを忘れないでください。興味の持てないテーマ、実用性を感じないテーマだと続きません。 同じ素材を何度も繰り返すことになるので、教材の中身は契約前に確認しておいたほうがいいと思います。

第2段階で見るのは、形式と質です。

思い立ったときに予約なしで始めたいのか、定期的なスケジュールを組みたいのか。講師を指定できるか、その講師の質はどうか。1対1で、テーマを指定して話せるか。話したいのが専門的な内容なのか、一般的なビジネス英会話なのかによっても、選ぶ先は変わります。

1対1が基本であり最も望ましい形式ですが、一つ限界があります。会議で必要な jump in の練習にはなりにくい。 自分と講師しかいない場では、割り込む相手がいないからです。これは第3段階でも同じで、この部分だけは実際の会議で練習するしかありません。

グループレッスンはコストの安さから選びたくなりますが、複数の受講者が求めているものが完全に一致することは少なく、内容が画一化しやすい。これは大きなデメリットです。

第3段階で見るのは、体験の中身です。

無料体験やカウンセリングで、自分の発話に対して具体的な指摘が返ってくるかを確認してください。カリキュラムの説明とスコアの話しか出てこないなら、そこは合っていないか、まだ早いかのどちらかです。

指摘が返ってきて、しかもそれが自分では気づいていなかった内容なら、そのスクールは第3段階の役割を果たします。

その前に、会社の制度を確認する

自費の話を書いてきましたが、その前に確認しておくことがあります。

外資系には語学研修の制度があることが少なくありません。ただし形はさまざまで、期待しすぎないほうがいいと思います。全額補助は限られていて、半額補助や一部自己負担のほうが多い。対象者が限定されていたり、申請の時期が決まっていたりもします。私の場合は全額会社負担でしたが、これは条件に恵まれていたほうです。制度があれば得だ、とまでは言えません。

それでも確認する価値があるのは、第3段階の割引よりむしろ、第1・第2段階が無料で手に入る場合があるからです。

全員向けにeラーニングが用意されていることがあり、内容によっては音読やシャドーイングの教材、オンライン英会話の枠がそこに含まれます。使われないまま眠っていることも珍しくない。これが使えるなら、①と②のコストはゼロになります。順番を守りながら自費を出さずに進められるので、確認する順番としてはここが最初です。

第3段階については、補助があっても判断は変わりません。①②を終えていなければ、半額でも早い。制度の有無ではなく、自分がどの段階にいるかで決めてください。

確認は、上司に聞くのが早いです。人事に問い合わせれば制度名で分かります。英語で困っていると伝えることに抵抗があるかもしれませんが、業務上必要だから申請するという話であって、能力の告白ではありません。

まとめ

なお、①と②で何を潰すのかは、会議で実際に詰まる場所を知っていないと決まりません。音量、単語だけで投げる癖、意図より強く伝わる否定、発言の順番の取り方。そちらは別記事で整理しています。