外資の英語面接で、あなたの英語を採点しているのは誰か — 面接官側から見た準備と逆質問
想定質問を30個作った。エージェントからもらったリストに、口コミサイトで拾った質問を足して、STARで組み立てて、一つ10分ずつ音読した。
面接の最初の20分は、想定どおりに進んだ。自己紹介、志望動機、直近の実績。用意した答えがそのまま出てきた。
崩れたのはそのあとだった。答え終えたところに、もう一つ質問が来る。Why did you decide to do it that way? リストになかった質問ではない。自分がたった今話した内容から出てきた質問だ。
準備が足りなかったのだと考えて、次の面接に向けて想定質問を50個に増やす。これは効きません。増やしても同じ場所で崩れます。
私は、自分のチームに入る人の面接にも出てきましたし、自身が面接を受ける側であったこともあります。60分の面接枠で何を見られるか、重点をどこに置くかを書きます。
質問リストは正しい。ただし、回答までしか設計していない
検索して出てくる英語面接の記事は、どれも同じ形をしています。面接官が見るポイントが3つから6つ、頻出質問が10個から20個、英文の回答例、事前準備のチェックリスト、STARメソッド、逆質問の例。
この型が間違っているわけではありません。質問リストは実際に当たりますし、STARで組み立てた回答は、組み立てていない回答より確実に伝わります。準備した答えが口から出てくる状態を作るのは、面接対策として正しい。
問題は、それが設計しているのが回答までだということです。
60分の面接が、質問リストの読み上げだけで終わることはありません。答えれば、その答えに対して次の質問が来ます。そして、面接で差がつくのはほぼ全部そこから先です。
面接官が60分で見ているのは、回答ではなく回答のあと
採用する側に座っているとき、こちらが見ていたのは次の4つでした。どれも、準備した回答を聞いている間には観測できません。
質問の意図を取り違えずに答えているか
面接の質問は短く、評価の重心が後半に来ます。Tell me about a time you disagreed with your manager. と聞かれたときに知りたいのは、食い違った場面の説明ではありません。実際にどう対処したか、ひいては、入社後に意見の食い違いが起きたときに建設的に動けそうかどうかです。
具体性のない答えも、自分を正当化するばかりの答えも、評価は下がりかねません。上司や前職の批判も避けるべきです。
ここには気づきにくい仕掛けがあります。**面接では、母語話者でも丁寧に質問してくれます。**聞き返せば、より分かりやすく説明してくれます。ところが、質問の意図から外れた回答を長く話していても、指摘は入りません。笑顔のまま次の質問に進みます。
**評価は下がっています。**本人は気づかないどころか、うまく回答できたと解釈することすらあります。そして届くのはお見送りのメールです。
外れていることを教えてもらえない以上、外れる前に確認するしかありません。
Just to make sure I answer the right thing — do you want the situation, or how I handled it?
確認は減点になりません。ずれたまま3分話すほうがはるかに重い。聞き取れていない場合の対処は英語の会議が聞き取れないに書いたものがそのまま使えます。
答えが結論から始まっているか
背景の説明が2分続いて結論が最後に来る人と、結論を置いてから理由を並べる人では、同じ内容でも伝わり方がまったく違います。
面接には、これが起きやすい固有の事情があります。準備した回答ほど、背景から始まる。 STARは Situation が先頭にあるので、その順で音読していると、本番でもそこから話し始めます。状況説明を丁寧にやるほど、結論に届く前に相手の集中が切れる。
用意する順番は STAR のままでかまいません。話すときだけ、R から入って戻ります。
We ended up cutting the launch scope by half, and it shipped on time. Let me back up — here's what was happening.
分からないことを、分からないと言えるか
面接では「知りません」と言うと落ちると考えられています。実際は逆です。
答えを持っていない質問に推測で答えると、その答えに対して次の質問が来ます。 根拠のない答えは、追撃の一回目で崩れます。崩れた時点で、それまでの回答の信頼性まで一緒に下がる。
沈黙で埋める人と、言える範囲に切り替えられる人がいます。
I haven't worked with that directly. What I have done is …
言い切ってから自分の領域に移します。I think maybe … と濁したまま話し続けるのが、いちばん避けたい形です。
反論されたときに持ちこたえるか
面接官が反論してくるとき、本当に反対しているとは限りません。押したときに何が起きるかを見ています。
一度押されただけで前言を引っ込める人と、指摘を認めたうえで自分の根拠を残す人がいます。後者に必要なのは強く言い返すことではなく、認めることと残すことを同時にやることです。
I see your point. At the same time, …
どこまで強く返すかの調整は、英語だと日本語の感覚が当てになりません。そこは英語で反対すると、意図より強く伝わってしまう理由に分けて書いています。
想定問答は捨てず、使い方だけを変える
ここまで読んで、想定問答の準備が無駄だと受け取らないでください。準備した回答は実際に使いますし、あれがないと最初の20分が持ちません。
変えるのは使い方です。準備の終わりを「回答」ではなく「その回答から来る次の質問」に置きます。
一つは、自分の回答を読み返して、いちばん弱い場所を探すことです。自分や他の人が疑問に思うところが、そのまま面接官の追加で聞きたいところになります。
- 数字が出てこない箇所(
How much did that actually move?) - 自分一人の成果に見える箇所(
Who else was involved?) - なぜそうしたかが説明されていない箇所(
Why that approach and not the obvious one?)
30個の質問に30個の答えを用意するより、5個のエピソードに15個の追撃を用意するほうが効きます。エピソードは面接ごとに使い回せますが、追撃への答えは使い回しが効かないからです。
もう一つは、アピールできる実績を、実務のレベルまで見直しておくことです。質問に一部だけ答えて、そこから準備した実績の説明に繋げられます。質問に正面から全部答えなければならないわけではありません。60分をどこに使うかは、相手任せにせずこちらでも設計できます。
さらに踏み込むなら、突っ込まれるだろうと分かっている穴をあえて残した回答を用意して、追加質問の方向を誘導する手もあります。トリッキーですが、方法論としては成立します。
関門は2つあって、決めているのは後ろのほう
ここからは、採点している側の話です。
外資の選考には、性質の違う関門が2つあります。
1つ目は会社の関門です。 応募が来た段階では、一人ずつ実務を評価することはできません。大枠でスクリーニングするしかないので、数字と書面が機能します。TOEICのスコアが効くのはここです。逆に言えば、ここは数字と書面の見栄えでカバーできる領域で、スコアが参照されるのは最初の一回だけというのはこの関門の話です。
2つ目は部署の関門です。 実際に一緒に働く人が、実務で何に困っているかを基準に判断します。そして、採否の決定権はこちら側にあります。
両方を満たす必要があります。1つ目を否定しているのではなく、役割が違います。
そのうえで、2つ目の関門には特徴があります。
面接官が複数いることは多く、意見は割れやすい。 議論があるのが普通です。ただし、採用する部署の責任者の意見が最も通りやすい。
そして、英語力をどれだけ重く見るかは、部署ごとに動きます。動き方には理由があります。
- その部署が英語をどう使っているかで基準が決まる。 部署全体の英語力が高ければそこが基準になりますし、低ければ下がります
- 相手側の事情が入る。 日本語を介さないカウンターパートがいて、通じないと露骨に困る関係なら、英語力の比重は上げざるを得ません
- 本社とのやり取りは部長が引き取るので、スタッフレベルの英語力は問わない、というケースもあります。ただしこれは例外です
つまり、「この会社は英語がどれくらい必要か」という問いには答えが出ません。答えが出るのは「この部署は英語をどう使っているか」のほうです。
動くのは英語力の比重であって、下限ではありません。英語面接が設定されている時点で、通じるかどうかは必ず見られています。
英語面接の逆質問は、評価を稼ぐ場ではない
逆質問の例として紹介されるのは、企業のビジョン、研修制度、ポジションの背景といったものです。検索すると、そのまま使える英文例を数十個並べた記事がいくつも出てきます。どれも、面接官に好印象を与えるための質問として紹介されています。
ただ、少なくとも私は、面接官の席に座っていたとき、逆質問を評価の対象にしていませんでした。 面接官は複数いることが多いので、そこで点をつける人もいるかもしれません。それでも、例文リストを暗記する時間があるなら、前の節で書いた「回答から来る次の質問」の準備に回したほうがいい、というのが私の考えです。
いい質問が来て、面接が予定より長くなったことはあります。ただそれは、点数が上がったというより、会話が続いたということです。
では、逆質問の時間は何に使うのか。自分の判断材料を取るために使います。
私が受ける側だったときに聞いていたのは、たいてい今後のプロセスと、具体的なタイムラインでした。
What are the next steps in the process?When can I expect to hear back?
地味ですが、次に何回、誰と話すのかが分かれば、その準備に移れます。
もう一つ、前の節の関門の話が本当なら、逆質問には別の使い道があります。自分が入る部署が英語をどう使っているかを、その場で聞けます。
「英語はどの程度使いますか」では何も分かりません。「必要です」と返ってくるだけです。聞くのは事実のほうです。
Who would I be working with outside Japan?Is that mostly with the regional team, or with headquarters?Who on the team handles the calls with headquarters today?
前任者がいたなら、その人が実際に何をしていたかまで聞けます。返ってくる答えで、自分が入る部署の関門がどこに置かれているかが見えます。
これは入社後の想定にもそのまま使えます。外資に入ってから、英語で実際に困ることは、この逆質問で事前に聞けることとかなり重なります。
詰まったときに言い換えて到達する部分は、独学では伸ばしにくい
4つのうち、1つ目と2つ目(意図を取り違えない、結論から始める)は、一人でも練習できます。自分の回答を録音して聞き返せば、どこから話し始めているかは自分で分かります。
一人では扱えないのは3つ目と4つ目です。難しい単語が出てこないときに別の言い方で到達する、押されたときに根拠を残したまま認める。どちらも相手がいて、詰まる状況が実際に起きないと練習になりません。
そして、自分の答えのどこが弱いかは自分では見えません。弱いと分かっていれば最初からそこを埋めています。見えていないから、面接官がそこを突いたときに初めて分かる。
この領域をどう埋めるかは、英会話スクールに自費で行く前にで段階ごとに分けて書いています。
まとめ
- 質問リストとSTARの準備は正しい。ただし設計されているのは回答までで、面接で差がつくのはその先
- 採用側が60分で見ているのは、質問の意図を取り違えないこと、結論から始めること、分からないと言えること、反論に持ちこたえること
- 意図から外れた回答に指摘は入らない。笑顔で次の質問に進み、評価だけが下がる。外れる前に確認する
- 推測で答えると、次の質問で崩れる。知らないことは言い切ってから自分の領域に移す
- 想定問答は捨てない。準備の終わりを「回答」から「その回答から来る次の質問」に移す
- 関門は2つ。会社の関門は数字と書面で越えられる。採否を決めているのは部署の関門のほう
- 英語力の比重は部署ごとに動く。逆質問は評価を稼ぐ場ではなく、プロセスとタイムライン、誰とやり取りするのかという事実を取るために使う
面接の前に確かめておきたいのが、自分のスコアで応募していいのかという点であれば、外資系の転職で、TOEICのスコアが見られるのは一度だけを先に読んでください。この記事は、その関門を越えたあとの話です。